ウォークマンから流れる忘れじのロッド・スチュワート、ボーダーの半袖シャツ、
疾走する2人乗りのバイクに80年代のセンチメントが漂う。
若き日の恋は太陽の下で輝きながら、傷つけ合って愛を知る。胸をしめつける素晴らしい青春映画だった。
少年という生きものを、ちょっと困るくらいすぐそばに感じた。
こんなにも一途で、熱く、愚かで、美しい恋がある。
この人が愛しい。その想いが鮮やかに発光していた。
十代だけに訪れる恋の物語。全ての人が心揺さぶられるだろう。
誰もが一度は抱いたはずの哀しいほどに純粋な、そしてはかない愛情。その残酷さに胸を引き絞られる思いがします。
彼らの物語であるとともに、誰かを愛する我々自身の物語です。
痛いほど危うくて、はっとするほど美しい。
青春としか呼びようのない時間が見事に凝縮されている。
「理解」しようとすると、かえって見えなくなるものがある。
この映画に散りばめられた繊細な感情を、ただ静かに見つめていたいと感じた。
人は誰も愛する人の心はおろか、自分の心さえ自由にできない。
過ぎ去ってしまった夏の恋は、あまりに刹那的で残酷だ。けれどまばゆいほどに美しい。
そばにいるのに手が届かない。愛しているのに言葉が届かない。
星の光が遠い空で燃える恒星の光であるように、最愛のひとへの距離は、永遠に近いほど遠い。
ひとを思うことは、熱く苦しく幸福で、そして永遠に切ない。
アレクシの瞳からこぼれる涙の描写が印象的で美しかった。
ダヴィドに恋する気持ちが痛いほど伝わって、一緒に恋に落ちている気分だった。
純然な恋心は物語の中でしか味わえないのかもしれない。
想像を絶する痛みを書くことで乗り越えた少年の話を通し、視聴者はアレクシと出会うことができる。
一方でダヴィドは見終えてなお、幻想の中にいる。それが恋の本質なのかもしれない。
10代のときに特有の、一瞬一瞬がとげとげしく引っかかる、ものすごく遅く流れる時間を再体験してしまう。
唇の色や肌の質感までも痛々しく迫ってくる。触感のある映画。
80年代が舞台なら同性愛への差別、葛藤、自己嫌悪などが色濃いのでは……と構えていたが、そういう映画ではなかった。
恋を知ったアレックスのひたむきな心に、優しく寄り添う物語だった。
ノルマンディーの美しい空と海。
帆走するヨット。
疾走するバイク。
夜の映画館。
クラブでのダンス。
ウォークマンから流れるロッド・スチュワートのハスキーボイス。
きらめく景色の中で、少年たちの恋は加速していく。
懐かしいヒットソングを聴きながらアレックスの恋を見守っていると、遠い夏がよみがえってきて、郷愁に胸が疼いた。
空と海、ケミカルデニム、いたいたしいほどにまぶしい少年たちの時間。
そこにある褪せたターコイズブルーがあまりにも鮮烈に心に刺さる。
冒頭アレックスは「君の物語じゃない」と言います。
だけどTHE CUREの「In Between Days」が流れた瞬間これは傑作かもしれないぞと思い、
見終わる時には僕のための映画になってました。
前に進まなきゃと思ってる人に是非見て欲しい映画です。
海の水色、ジーンズの青、灼けた肌のオレンジ、緑のセイル。
鮮やかな色彩の熱い恋、しかし物語はどこかずっと不穏です。
恋に囚われたまま、逃れられなくなってしまった青年の物語。
人をここまでさせるなんて、恋ってやっぱり恐ろしい。
ダヴィドの神々しいまでの美しさと、彼に寄り添うアレックスの微笑みの可憐さに終始終わりの予兆が付きまとい、
気づけば2人のみちゆきを固唾を飲んで見守っていました。
少年の心の高揚とか陶酔とか焦燥とか失望とか狂おしいほどの衝動とか鮮やかに描き出された初恋のすべてが深く胸を刺す作品です。
美しい映像とともに、初恋、誓いを守る為の狂気、思いを文章にすることの大切さがよく分かる映画だった。
好きな人が出来ると世界は広がる。
淡い色合いがこの物語の美しさや儚さを一層際立たせている。
二人の青年の友達でいて恋人のような姿は、十代にしかない爽やかなひとときと、日常のシーンを切り取ったようなリアルさが印象的。
「男同士では共感されない」作品中のこのセリフが私の胸を突いた。男同士だというだけで隠さなければならなかった恋。
しかし幸いなことに、彼の物語は終わらない。2021年から、1985年の彼にエールを送りたい。
主人公アレックスとダヴィドは確かに愛し合っていた。ただその愛は交錯し行き違う。愛が交錯し合う時、アレックスは幸せだった。
しかしダヴィドは拘束より自由を求めた。アレックスの純粋な、そして一途な愛に心打たれる。アレックスの愛情のあり方に涙した。
これは純粋な愛の物語。誰もが理解できる愛の形が様々な要素を呈して描かれている。