世界三大映画祭の常連にして、世界中から新作を待ち望まれているフランス映画界の巨匠フランソワ・オゾン。監督最新作は、自身が17歳の時に出会い深く影響を受けたエイダン・チェンバーズの小説「Dance on my Grave」(おれの墓で踊れ/徳間書店)の映画化。描かれるのは、運命的な出会いを果たした美しき少年たちの、初めての恋と永遠の別れ。原作小説に感銘を受けた自身の10代当時の感情を投影しながら、少年たちの忘れられないひと夏の恋物語を鮮やかに映し出す。これまでにオゾンが描いてきた過激な恋愛描写は封印し、爽やかで瑞々しい極上のラブストーリーが誕生した。
原作は、当時17歳のオゾンに衝撃を与え「いつか長編映画を監督する日がきたら、その第一作目はこの小説だ」と決意させたエイダン・チェンバーズ著「Dance on my Grave」(おれの墓で踊れ/徳間書店)。オゾン自身が「知らず知らずのうちに小説のテーマを映画に取り入れていた」と振り返り、これまでの監督作にも影響を与えた重要な作品であることを明かしている。念願の映画化においては、惹かれ合う少年たちの恋愛模様をストレートに描き、原作を読んだ自身の10代当時の感情を表現することを重視した。「この小説をどう映像で語るか、私にはじっくり熟成させる時間が必要だった。そのおかげで、原作の本質から逸脱しないで済んだよ」と、満を持して完成した映画であることを語っている。
当初から映画化を望んでいた原作者のチェンバーズは、完成した映画を鑑賞し「オゾンが僕の夢を叶えてくれた。彼の作品の中で一番いいね」と絶賛。「オゾンが小説の真髄に沿ってくれたことが嬉しかった。変更は小説を踏まえたものもあって、何なら小説よりよくなっているものもあったほどだよ」とその手腕を評価している。
本作では、印象的な場面で世界的ヒットソングが使用されている。オープニングで流れるのは、THE CUREの代表曲「In Between Days」。オゾンは本楽曲を「積極的に人生を切り拓こうとしてダークサイドも知ることになる、主人公アレックスに合っている」として、THE CUREに劇中での使用を直談判した。THE CUREのメンバーからは、楽曲使用の条件として「本曲リリースの1985年に映画タイトルを合わせること」を提示されたため、当初予定していた『Summer of 84』から『Summer of 85』へとタイトルが変更された。映画を象徴する重要なシーンで流れるのは、1975年にロッド・スチュワートがリリースした「Sailing」。リズムと歌詞が作品のイメージに合致するとして、こちらもオゾンたっての希望により採用された。